2001.3.7号 08:00配信


南極のドーム基地住人だった西村淳の
アドベンチャークッキング2
【気ままに語る食と人の話】

春の風が吹いてきた8


さて作戦はどうするか・・・・。
原稿を手に抱えて、東京をうろついても出版社がどこにあるかわからないし、見つけたとしても飛び込んで行く勇気はもちろんないし、なによりも暇がない。ここは原点に立ち返って、座ったままで出来る世界との情報通信パソコンに頼ることにした。

まずは愛器に火を入れて、検索エンジンを立ち上げた。「出版社」と単純明快に条件を入れてENTERを・・・
ずらりと日本全国にある出版社が並んだが、刊行本や会社の概要が銘記されているだけの物が多く、ボリューム量にもやや圧倒されてこれは早々に撤退。次にちょっと抵抗があったが「本 自費出版 出版」と入れて検索をした。

あるもんだ、あるもんだ。
いかに日本で本を出したい人が多いかを証明する如く、「貴方の原稿を本にしませんか?」とささやきかけるキャッチコピーで、まるでお祭りの屋台の如く、すらずらずらーと「自費出版お手伝い会社」が列挙されていた。

数社をピックアップし、原稿の最初の数十頁を圧縮し、BCCで送った。今度は不思議と高揚感がなかった。「同じような答えなんだろうなー」世の中の厳しさを一度体験したおじさんは、なんとなくしらけた気持ちで、デイスプレイの中で伸びていくブルーの線をブルーな気持ちで眺めていた。答えは前回よりも早く帰ってきた。関東にある一社は担当の編集者まで決めて(共同出版A)とかに決まった事を伝えてきたが、やはり経費がかかるとのことで、「フン!! 又金かい・・・」とふてくされる自分の心に従い、パスする事にした。

もう一つは関西にある某社。こちらはいきなり電話をくれた。それもかなり長く・・・・・。かなり気に入ってくれた様子で、「うちにまかしてくれたら悪いようにはしまへんけどねー」とまるでドーム越冬隊の「川村 隊員」を彷彿させるような軽快な関西弁で一気にたたみ込んできてくれた。このままだと、この会社に決まったかもしれない。

「アドベンチャークッキング」を評価してくれ、温かい励ましともとれる電話をもらった私は、一度燃え上がった怒りの炎が胸の中で消えていくのが感じられ、久方ぶりに安定した気持ちで、テレビのスイッチを入れた。そこに映っていたのは「阪神 野村監督」・・・・。巨人の悪口をとうとうとぶちまけていた。親子2代に渡っての熱狂的な巨人ファンの私は、関西から吹いてきた温かな南風が、その瞬間、雨・風混じりの暴風雨に変化するのがはっきりと感じられた。「関西もだめだワ・・・」ごろ寝をしたままブツブツとつぶやきながらチャンネルを変えた。

「岡本 太郎氏」が出ていた。今は亡き芸術家だが、なんとなくこの大家が心に留まった。「岡本太郎、岡本太郎・・・・・どこかで・・・??? 斉藤・・・斉藤清明!!  いたー!!!」39次隊報道オブザーバーで、50数歳の御老体にむち打ってはるばるドーム基地まで取材に来てくれた、京都毎日新聞、京大山岳部出身の斉藤 清明氏の姿がその岡本 太郎氏そっくりの外見と重なって目の前に浮かび上がってきた。




極研一のいい男に戻った平沢隊員


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