2001.3.15号 07:00配信


A Happy New Year !

(紋別市社会福祉協議会:篠原辰二)


ネパールには正月という日本や中国のような習慣はない。でもこの年、新世紀を迎えるカウントダウンパーティーやニューイヤーパーティーがあちらこちらのレストランやバーで行われてきた。街のいたる所には「A Happy New Year 2001」と書かれた横断幕がかかり、大きなレストランやバーは輝かしいネオンで街を明るく照らしていた。

日本を発ったのが12月31日。僕等は時差の関係で3時間15分、皆よりも多く20世紀を楽しむことができた。旅の移動に疲れていた僕等だったが、ネパールの正月を楽しみにしていた。友人シバの招待で参加した日本人男性とネパール人女性の結婚式は、カウントダウンパーティーも兼ねており、そこに出席していた者皆が時計を気にしながら、来るべき21世紀を祝おうとしていた。しかし、店の隅では、さっきまで仲が良さそうに話をしていたネパール人2人が言い合いになっている。僕等にはその内容など理解することができなかったが、一触即発の事態であることには間違いなかった。結局二人は互いにそのエネルギーを爆発させ、取っ組み合いのケンカになってしまった。周りの友人達は止めに入る。植木鉢を投げ合い、ガーデンレストランのイスをぶつける。プロレスの乱闘のような騒ぎだ。シバもケンカの仲介に入る。ネパール人は温厚な人種だと一般的には言われているが、酒を飲み、しかも国情が優れない今の状況では別である。どうしたらよいか解らなく、立ちつくしていた僕等にレストランのボーイが安全なところまで導いてくれた。そのケンカは10分くらい続いたのだろうか、折角の結婚式も台無しである。カウントダウンパーティーも。

シバが僕等の元に戻り、安全のためホテルに戻ることにした。カウントダウンのことも忘れ、ただ友達のケンカで憂鬱になっていたシバを元気づける。ホテルまでの帰り道、そこでも別のネパール人がケンカをしていた。酒で気分が高揚しているのは皆同じだ。そんなとき、あるバーの真下を通り過ぎようとした僕等の耳に「A Happy New Year !」の声が聞こえた。外国人ツーリスト達のカウントダウンパーティーが行われているようだった。21世紀の幕開け、憂鬱になっていたシバもこの時ばかりは新世紀を祝った。雨でどろどろの道、ケンカで明け暮れている夜、ネパール王国首都カトマンドゥ、タメル地区の路上で僕等は新世紀を迎えた。日本では家族や友人が「ゆく年くる年」を見終わり、早々に初詣にでも行っている頃だろうか。雑煮もおせちもこの地にはない。ホテルに戻った僕は、関西空港で買っておいた日本酒を口に運ぶ。僕の正月はこれだけで満足だった。



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