2001.3.12号 07:00配信


出発の日

(紋別市社会福祉協議会:篠原辰二)


12月31日、記念すべき21世紀最後のこの日、おそらく宿泊していた札幌市内のホテルで、誰よりも早く目を覚ましたのは僕等だったのではないだろうか。朝5:30、まだ薄暗い空、いよいよ集発だ。とはいっても、ここ(札幌)から千歳空港まで車を走らせ、そこから関西空港へ飛ぶ、その後国際線に乗り継いでネパールを目指す。その朝、体が重くなかなか目も覚めなかった。それもそのはず、前日は札幌市内の某中華料理屋で、北大の学生などの仲間と一時を共にしていた。忘年会と僕等の壮行会。北大の学生達は僕等が明日ネパールに行くことを告げると、興味津々で耳を傾けて聞いてくれた。もちろん酒も入っている。

旅の前日はあまり無茶をしてはいけないことを前回渡航で僕は教訓としていた。99年2月、W氏とのネパール渡航は波乱に満ちていた。その時の出発前夜、この時も二人だけで壮行会を行っていた。ホテルまでの帰り道、冬の寒さをこらえるべく熱燗を飲み過ぎた僕等、W氏は酒のせいか不注意か、足をくじいてしまった。その瞬間は酔っているせいもあって痛みはなく腫れもなかった。しかし、翌日の出発の朝、足を大きく腫れ上がらせ、足を引きずり歩くW氏の姿があった。W氏は千歳から関西空港、ネパールまでの移動中、約13時間、鎮痛剤を塗り痛みに耐えていた。そんなW氏の一件があったため、教訓として僕の中には生きていた。しかし、僕もまたW氏と同じように、酒を飲み過ぎ凍った路面で転んでしまった。昔取った杵柄で、柔道の受け身を取ってしまった僕は右手に痛みがはしった。笑いで恥ずかしさをごまかしていたが、前回W氏を笑った自分に恥ずかしくなった。幸にも僕は次の日には右手の痛みもなかったが、教訓は教訓として受け止めなければならないものだと改めて感じた。

昨日までは不安が見えなかった本間くんは、今朝から急にそわそわしている。貴重品入れのウエストポーチを何度も開けて中を確認し、そして閉じる。そんなことの繰り返し。多少の緊張感は大切だ。そういえば昨日の壮行会の席でいろいろと不安を募らせることを言ったからなのだろうか。ネパールへと向かう飛行機の中、二日酔いで胃の痛みと眠気にダウンしている僕の横で、主発前に購入したネパール語辞典を読み返している彼、ただの観光旅行ではない僕等の旅は、自分を見つめ、自分の力を試すための良い機会だ。関西空港を飛び立ち6時間が過ぎた頃、機内の小さな窓からは、世界の屋根を明るく照らす夕陽が鮮やかに輝いていた。



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