2001.3.11号 07:00配信


不安

(紋別市社会福祉協議会:篠原辰二)


3度目の渡航でも不安は多かった。

前回、前々回はあまり不安はなかったように思うが。近年、インターネットを初めとした情報の広がりで、よりタイムリーなネパールの情報を得ることができるようになった。ネパールは王国であり、国王は象徴として崇められているが、実際に権力を持っている人間でもある。この国の国家予算の7割は諸外国からの援助金、いわゆるODAである。その他は観光収入。国自体が少額の利益しか得られない為、この国の国民もまたお金を得ることは難しい、GNP$200US。しかも、数百年続いたカースト制が今もなお深く根付いている。事実上、法律では廃止になったはずなのだが、長年の風習、文化を今となってすぐに帰ることは困難である。

このような国の現状をこの国の政府は良く知っているはずなのだが、諸外国の煽りもあり、経済活動の成長期を迎えようとしている。特に日本やアメリカなどの先進国が行う海外支援による、急激な経済の成長によるものだ。10数年前から民主主義国家になったネパールでは、近年、こうした国の現状から「マオイスト」と呼ばれる毛沢東主義の社会主義派の組織が活発な動きを見せ、国家の現状や政府の矛盾さに奮起している。

ネパールはその国土を14県75郡で構成している。そのうちの9箇所の郡部は外務省が危険度3の渡航延期勧告を出していた。外国人の進入には適さない、警戒地域だ。これらの地域では、毎日のようにバスの襲撃や政府高官の殺害、警官や軍隊との衝突といった事が起きている。そんな情報を僕は事前に日本の外務省のホームページで知ることができた。

僕等が旅の準備をしている最中にも、不安が募る様々な事件がネパールで起きていた。安全と思われていた首都カトマンドゥでの暴動であった。これまでこうした衝突は首都を初めとする主要な都市では起こることがないと思っていた。しかし、今回。この暴動により4名の死者が出た。旅立つ前、不安は募る。しかし、「不安よりも楽しみだ」と気持を表現した本間くんには、そのようなネパールの現状を上手く伝えることができずにいた。結局、旅の出発前夜、札幌市内に宿泊し、そこで行った壮行会の時に酒の勢いを借りつつ、笑いながらそのことを彼に伝えた。互いに苦笑いするのが精一杯だったが。

旅の不安はもう一つあった。それは言葉の問題。実は僕も本間くんも英語がほとんど話せない。旅の準備をしていた12月、ネパールで訪問しようと思っていた施設や団体とアポイントを取るため、イーメールで連絡を取り合っていた。当然ながら文面は英語。ただ旅のスケジュールと尋ねたいことを伝えたいだけのことだが、その英文が僕等には難しかった。単語やその意味を調べるために手にした辞典は、開くだけで頭が痛くなるほどだった。英語に対する拒否反応、僕等は英語恐怖症に陥っていたのかも知れない。

「何とかなるだろう」とこれまでの渡航で培ったネパール語の知識をフルに発揮すれば、この1週間の行程を無事に終了することができるだろうと半分勢い混じりで旅に挑む。「何とかなるさ、必要に迫られたときには自分の力を信じよう」出発前、そう自分に言い聞かせ、不安をごまかしていた。



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