2000.11.7号 06:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「39次隊が来た」

1998年1月8日、御年56歳の山田隊員をリーダーとする39次夏期旅行隊がドームへやってきた。平均年齢44、5歳のご高齢部隊だから、かごにでも乗ってやってくるかと思ったらちゃんと雪上車に乗ってやってきた。次々に3台の雪上車から降りてくるが、補給隊の時とは違って不思議となつかしさは覚えない。これが初対面だからといえばそれまでだが、なんだか平和な生活を乱す侵入者が、やってきたようでちょっとイライラした。だが橇から色々の荷物が下ろされる頃になって、一気にそんな感情は崩壊した。

なんと艦止めと言われていた「第1便」を持ってきてくれたから・・・・
ばんざーい!! うれしーい!!!
おまけに「しらせ」からのプレゼント、キャベツとタマネギまでが出てきた。「第1便」はさっそく食堂に集められ各自に配布されたが、どうも自分の段ボールが他の人よりも多い気がする。「第一便」は段ボール一つときまっているが、私のは上から見ても、下から見てもどう見ても4つある。愛妻「みゆきちゃん」札束でも入れてくれたのかと思ってこっそりあけてみるとなんと新作のビデオテープが100本以上出てきた。最初は「しらせ」留め置きの予定だったが、映画好きの隊員がどうしても見たいと思い、なんとか場所を作って運んできたのだとか。

本日は到着したばかりでもあり、メンバーの体力も考えて最初から大宴会にすると確実に死人が出ると思い

・キャベツとタマネギとハムのサラダ
・ニンニクの芽のお浸し
・牛肉たたき
・和風ロールキャベツ
・トラウトサーモン塩焼き
・鮭の粕汁

とお総菜風のささやかメニューにした。後かたづけもそこそこに久しぶりの映画館「みゆき座」の上映会が始まった。白夜の南極にこの日は遅くまで「インデペンデンスディ」のサラウンドが響き渡った。

先発隊の出発が一週間後とせまったある日曜日、「作業も忙しいが想いでづくりをしましょう」と言うことで、ドーム恒例屋外ジンギスカン大会が挙行された。キャベツ・タマネギを大量に入れ、雪原に正しいジンギスカンの香りが漂った。39次隊の皆様はせっかく持ってきた生野菜が、サラダではなく火を通してがんがん消費されるのが不思議そうである。昭和基地からサポートでついてきたパイロットの「河端隊員」も「いやーせっかくの生野菜がもったいないなあー」とちょっと怪訝そう・・。

ここでは生野菜は鮮度も追求される事を39次隊ご存じ無かった。ドームでは36次隊が持ち込んだ「逆さ野菜製造器」がフル稼働状態で越冬中はおそらく「昭和基地」の4〜5倍は確実にレタス・貝割れ・もやし・グリーンカール・リーフレタス・サラダ菜・サニーレタスが製造され、豊富に食べていた。したがってせっかくの「しらせ」からのおみやげのキャベツ・タマネギも一ヶ月遅れの処分品となってしまい、最初は物珍しげに箸を出していた隊員達もすぐあきて、みそ汁やシチューの具となってしまった。

ジンギスカンの最中に、農協担当「林隊員」が誇らしげに凍結防止のアイスボックスから取り出した、サニーレタスを見たときの39次隊員一同のびっくりした顔と言ったら・・・・・・・。長年連れ添った奥様が、ある日パンツを脱ぐとそこに自分より立派な逸物が生えていた・・・以上の顔だった・・・表現が下品だなぁ

はるか昔に南極越冬隊の経験を持つ「山田隊員」曰く。
「あのころこれを出したら家一軒と交換してもこれ食べたいって言う人が絶対いたヨ」と一言。家一軒はあんまりなので「葉っぱ一枚とウイスキー一本交換してもいいよ」と真面目にふったのに、みんなに見事、無視されてしまった。欲をかきすぎたかな・・・。

39次隊雪上車


39次隊歓迎会


歓迎雪上大ジンギスカン大会


注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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