2000.10.19号 07:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「川村隊員誕生会」

「昭和補給隊」も苦労しながらではあるが、確実に距離を刻んで、ドーム基地に近づきつつある10月18日、「川村隊員」の誕生会が開かれた。

貴重なドームのバイブレーヤーとして雪氷のアシスタント・庶務をテキパキとこなし、どんなことを頼んでも「まかしといてくんなはれ」の一言で腰も軽く動いてくれる、さわやか兄ちゃんである。余談だがこの川村隊員、ロン毛と怪しい中国人の様なちょび髭の形態のまま、オーストラリアまで行ってしまい、愛妻の「ふみこちゃん」と再会し、観測隊主催で、ゴールドコーストのレストランを貸し切り、「結婚披露パーテイ」をすることになるのだが、白いタキシードと首から上があまりにもあわなかったせいか、子供達から「エッチのすけ」と呼ばれることになる。

とにかく「誕生会」である。
例によって、シェフが私で、サブシェフは盆。リクエストをとったところ、「高いフルコースで出てくる、小さくてやたら柔らかい牛肉をベーコンでぐるぐる巻きにしたやつを、たくさん・たくさん・たくさん食べたーい。」とのとのご注文。「スティク・アラ・トルネードね・・・・肉料理としてはスタンダードだけど、流行遅れ何じゃないの??」と思ったけど、兄ちゃんのつぶらな瞳を見るととても口に出しては言えなかった。

とっておきの肉を使うことにして、盆と一緒に世界一の広さと低温を誇る冷凍庫へ。段ボールをがさごそやって、「宮内庁御用達中央畜産御推薦松阪牛ヒレ肉6kg肉塊」を発掘した。これは調達の段階で、見積もりを取って貰った所、なんと6kg¥200.000と記載されているのを見て、目の玉どころか脳味噌から内臓まで飛び出しそうになって、あわててキャンセルの電話を入れたが、もう発注済みだったと見えて、営業のおじさんに「この芸術品のような肉を探し出すのにいくら苦労したか・・・ETC」と泣きつかれ、強引にキャンセルしたら絶対この人に刺されると思い、泣く泣く購入してきた2塊の内の一つだった。

−60℃の冷凍庫内でも「宮内庁御用達中央畜産御推薦松阪牛ヒレ肉6kg肉塊」は「どうだ高くてうまそうだろー」とがちがちの冷凍状態の中でも、絶対に他を圧して威張っていた。 たかが肉のくせに生意気な・・・・・。とにかくステーキは盆がパーテイのメインとして、盆が鉄板で焼くことにして、「川村隊員誕生会MENU」は

・ステーク・アラ・トルネード
 マデラソース

・虹鱒のムニエル、アーモンドソース

・ムール貝、リヨネーズ

・鯛の一匹まんま姿揚げ凄いだろフライ

・チキンガランティーヌ、オレンジソース

・鰹とロブスターのシーフードサラダ

・ミニオムレツ

・レアチーズケーキ

となった。

概算して総額約¥500.000!!!!!のおそらく今までで最高の原価だったこの食材もいつものように豪快に隊員の胃袋に消えていった。尚「超高級ステーキ」はそれに行き着くまでにみんなの胃袋が爆発寸前になって大半が余り、次の日の昼食に「個人で作る札幌一番味噌ラーメン」の具としてその数奇な一生を終えた。

ご満悦?


これが高ーい肉です



注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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