2000.8.28号 07:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「9月だぞー」

9月に入ってますます絶好調になってきたのが、平沢氏と福田氏だった。平沢氏はGPSゾンデの測定や、りんさんの¥2、000、000ペイロードの有効活用に刺激されたのか、これ又小さな気球を凧糸につけたまま上げ下げして観測する「係留観測」を精力的に行い、福田ドクターは例の「ドラム缶人力基地内搬送作業」を一日1〜2本のペースで着実にこなし、大量のドラム缶を基地外にデポしていた。ついでに、車両は相変わらずフリーズしたままで「佐藤隊員」の明るい時だけトライする「車両立ち上げ作業」にも力強いエンジンの雄叫びを雪上車が上げる事は今だになく、「補給隊が来たら動けばいいやー」等との人任せ、他力本願の声もぼつぼつ出始めていた。

その平沢氏だが、休日の朝だけ営業する自分の会社「平沢ベーカリー」の社長職を技術面では2名の社員に大差をつけられたのにもかかわらず、未だ 社長職退任の意志はないようで、休日の前になるといそいそと材料だけは食堂に運んで来ている。キッチンエイドミキサーと言う機械で粉をこね上げて、オーブンで一次発酵していくのだが、どうも平沢氏せっかちなようでちょっと膨らんでくるとすぐ次の課程に移行したがる傾向がある。そのため出来たパンは、石かせんべいの様にガチガチになってしまう事が多いが、ドームの住人の強靱な胃袋は、棍棒としても使用可能な程、硬度のある「一見パン風小麦粉がっちり焼き」を結構おいしがって食している風で「空腹こそ最良のソースなり」の格言が平沢ベーカリーのパンを見るたびに頭の中に浮かんでくるようになった。

「福田ドクター」だが、前途のドラム缶ころがしだけでは身にあふれてくるエネルギーを消化しきれないようでその後休む間もなく、羽毛服を着たままジョギングにかかさず出かけ、それもー60℃の気温も気にしないで実行し続けているのを見ると、絶対この人はウルトラマンに違いないと確信できる。もう一つの趣味料理も格段の進歩を見せ、9月10日の食事当番のMENUを見ると

・サザン・ガンボー(おくらのスープ)

・卵とほうれん草のキッシュ

・ターメリックライス

・カリフォルニアミックスサラダ

とアメリカンキュイジーヌを見事にこなすようになっていた。日本にいるときは、米を炊くとき水加減があることすら知らなかった人なのに・・・。「苔の一念岩をも通す」格段の進歩である。

平沢氏の係留気球


ドラム缶転がし


ドクターのアメリカンキュイジーヌ

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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