2000.8.25号 06:00配信


Home


第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「りんさん又々考えた」

大気球にぶら下げて、成層圏高く打ち上げる計測器「ペイロード。」見た目は小学生の夏休みの自由研究としか写らない代物だが一個¥2、000、000の高額商品である。これは回収さえ出きれば何回も使用可能だとの事であるが、ここでは絶対不可能、事実上の使い捨て状態になっていた。しつこい科学者「りんさん」資源の有効活用をはかり、これを別の計測に使うことにした。

基地近くの鉄塔に滑車をセットして、7mの高さから段階的に地表までの温度を計測するオペレーションである。慢性人手不足のここでは、助手は私・西平盆・川村の兄ちゃんと最初から競争率0.8倍で決まっていた。

ー70℃、風速10m/sの日本で言えば凄まじい環境。ここでは普通の環境で作業開始となった。最初はペイロードがぶら下がっている所から地表まで腕で金属製の巻き尺を計っていたのであるが、なにせー70℃。すぐ指の感覚はなくなり、羽毛服をきて、すぐ暖める事のできる箇所。へそ下三寸すなわち金玉を握って暖をとらなければ、たちまち凍傷一直線になってしまう。

変態オヤジみたいに掴みっぱなしというわけにも行かないので、「何かいい方法は・・・」と周りを見回すと、雪原にポツリと立っている雪だるまじゃなく、羽毛服に身を固めた「西平 盆隊員」の雄志。

「このドラム缶のような体を使えないかなあ」とその場に居合わせた全員が確かに同時に考えていた。これは越冬中に発達したシックスセンス、テレパシーが確かにみんなから伝わってきたから間違いない。そしてたどりついた最も能率的な計測法とは・・・盆の体に直接滑車のロープを結びつけ「もう少し前、後、その場に止まる」と声で微調整していくのが一番スムーズに作業を進めていけることがわかった。こうして画期的なデーターを取得できたのかどうかはよくわからないが、「西平 盆人力測定器」の85kgの体重はこの時大いに重宝したことは間違いない。

盆の人間計測器

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



あなたのご意見やご感想を掲示板に書き込んでください。

indexbacknext掲示板

Home
(C) 1999 Webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせは webmaster@webnews.gr.jp まで。