2000.6.18号 07:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「ミッドウインター10」

1997年6月21日「ミッドウインター」2日目に入った。

この日は宴会の中休みと言うことで、食事当番もおかず、「各自で好きな物を作って食べる気ままな1日」になっていた。2日酔いの翌日、北海道のおやじの86.5%はラーメンを食べることになっている。その昔からの取り決めに従って、朝と昼の中間に「札幌一番味噌ラーメン昨日の中華の残り投入豪華版」を作ろうと思って鍋でお湯を沸かしていると、どこから沸き出してきたのか、隊員諸氏がぞろぞろ集まってきた。

人間の三大欲と言えば、食欲・性欲・物欲となっているようだが。ここでは性欲のパートナーがいるはずもなく(全員ノーマルであった・・・多分)物欲を満たそうにも店はなく、金も必要ではない。 残るのは食欲のみであった。建前では「連日の宴会では大将が大変だから自分たちでなんとかしょう」と考えていてもドームの廊下にただよう味噌ラーメンの芳香に理性は地平線の彼方へ消し飛び、本能の命ずるままに、北海道弁で「ほいと」の順番に可愛らしい微笑を浮かべて私の瞳にSOMETHINGを訴えかけてきた。

一番手はパソコンと食欲に生きる男「西平盆」、二番手は腹が減ると一気に体力がしぼんでそれはそれはなさけない形状に変化する「福田ドクター」だった。「いいよー順番に作るから待ってて・・・」にわかラーメン店には結局総員6名の長蛇の列が出来た。客でなかったのは、朝早くからラーメンの上に蟹チャーハンをのっけて、盛大にすすりこんでいた「本山隊員」と取り決めは遵守する公務員、「金戸基地長」あらため「金ちゃん」の2名だった。ただし金ちゃんは、7名でうまそうにラーメンをすすりこんでいる状態を見て「あっ食事が始まっている!」一時的錯乱状態に突入し、ドームでの「パブロフの鐘」ならぬ食事のテーマソングZARDの「揺れる思い」を基地内一斉放送で流してしまうどじをおかし、はずかしさのあまりその場から逃走したので、正確には、ラーメンを食べた物8名、食べたかったけど食べ損ねた物1名の結果となった。

けなげに「自給自食」に耐えている隊員達を見てさすがにちょっと可哀想になり、夕食はボランテイアで、炊き立ての御飯・即席みそ汁・梅干し・納豆・佃煮・コロッケそして「硬派の卵焼き」とドームで呼称されているバター・醤油味の卵焼きを並べておいた。よほどみんな腹が減っていたのか、1時間ほどで、舐めたようにきれいに片づいていた。

これ以降期間内は、宴会のない日にちょっとした物を作って並べておくことにした。いつもいつも休みがない、奥様達の苦労が少しわかった。毎日、毎日の食事の支度「ご苦労様です!!」

「本山隊員炒飯のせラーメン」

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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