2000.5.29号 07:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊
「食と生活の記録」より/by 西村淳


「ミッドウインター6」

ミッドウインターが近づいてきたと言っても日常生活のすべてがそれに向かって動き出したのではなく、観測やその他の基地作業は淡々と進められていった。「金ちゃん」は相変わらず愛想なしの日記を書き続けて、3時間おきのぶっ通しの気象観測を続けているし、本山隊員は、朝07:30の朝一うんこから午後の雪のサンプリングまで行商のおっちゃんが出かけるごとく、判で押したように辛抱強く行っているし、林隊員は「しつこい科学者」と陰口を叩かれようと、毎日空を見上げて大気球を打ち上げるタイミングをねらうかたわら、女子寮の管理人のごとく、ビデオのつけっぱなしや、浴室の排水ポンプの止め忘れなどをチェックして「スピッツ りん」と新しいニックネームが増えたし・・・これで彼の正式名称は「バイキンマン・えてこう・スピッツ林」となったが、まだまだ増えるだろう。

佐藤隊員はー60℃以下の時と二日酔いの日とバイオリズムと星占いの結果が悪い日は当直日誌に「今日はさぼりましたー!!」とは書かず、まるで業績不振の会社の労働組合のごとく「がんばろう!!」「必ずしよう!!」「大変だけど達成しよう!!」「願うばかりである!!」が羅列されている文章を書き殴っているし、平沢隊員は観測のかたわら、倒産寸前の「平沢ベーカリー」を再建すべく起死回生の新商品を考えているし、ドクターは相変わらずー70℃の中でジョギングに精を出しているし、西平 盆隊員は私が「パチパチ作業」と名付けたMAIL作業の傍ら、チョコやようかんを腹に快調に納めているし川村の兄ちゃんは事務仕事の傍ら基地内の大工仕事に励んでいるし、私はといえば、相変わらずおもしろそうな仕事にちょっと首を突っ込んではすぐあきて、後は食前・食中・食後酒を無上の楽しみとしているアルコール依存症のオヤジになっているし、要するに普段と変わらない毎日が続いていた。

そんなある日「バイキンマン・えてこう・スピッツ林」隊員の当直日誌の一節が目に留まった。「ミッドウインター楽しむには、楽しませてもらうのだけではなく、楽しむと言う努力も必要。 みんなで頑張って楽しもう・」なんとなくこのフレーズが心に残り、漠然と「料理マラソンがんばんべー」位に考えていた私の心を「祭りを成功させよう!!!」モードに切り替えさせてくれた。どうも、どうもです。

「昭和基地 調理室2」


「昭和基地 夕食風景」


注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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