2000.3.19号 06:30配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「サブシェフ盆登場2」

ともかく夕食準備である。肉じゃがには冷凍の人参とジャガイモ、そして冷凍のスライスタマネギ。この中で冷凍のジャガイモは越冬を通じ大変重宝した。煮物用のクオーターカット、味噌汁用のダイスカット、ベイクド用の○のままと様々の形状があり、販売メーカーは北海道の「ホクレン」。帰国してからスーパーをのぞいても、あまり売られていないところを見ると、一部の営業用にしか使われていないのだろうか? 小分けにして売り出せば若い奥様層に好評を博すのだと思うけれど?。

白滝の代わりには秘密兵器「吉野のくず切り」。これはお湯でさっと戻して水洗いし、鍋に投入すると「白滝」のピンチヒッターとして立派に通用した。もう一つ裏技で、これを使った肉じゃが・すき焼き等は残ったのを冷凍して、再び戻しても、こんにゃく類のように細いゴムの様にはならず見事に再生してくれ旅行用のレーションとしても役だってくれた。ひじきは油揚げと銀杏の水煮缶詰と一緒にさっと炊き合わせ、ししゃもは本場北海道の子持ちシシャモ、雲丹くらげも利尻島の漁協で販売している1本¥2.500の塩雲丹を2本おごった。これを使って雲丹くらげを作ると市販されている物に比べいやな甘ったるさやアルコール臭さもなく、突き出しとしては絶品!!とうなりたくたるものに仕上がった。作った本人も日本で食べていたのとはあまりの違いに「これ・・ほんとに雲丹くらげですか・・・?」とカルチャーショックのご様子。でも盛りつけてみると、ししゃもは細いし、肉じゃが・ひじきは地味目だし、雲丹くらげはやっぱり酒の突き出しだし、なんとなく華やかさに欠ける食卓である。

またまた2人で冷凍庫に引き返し、しばし眺めて15秒、37次隊の残していった正月用の食材の中で、派手さなら世界一の食材「ボイル伊勢エビ一本まんま」が目に留まった。「これ使おう。 味噌汁にしよう。」逆から見ると卵から孵ったばかりのエイリアンみたいな伊勢エビを、2人で冷たさに震えながら9本食堂まで運び、大鍋に湯を沸かし約80℃で沸騰したところで「ボイル伊勢エビ一本まんま」をどかどかと投入。いい匂いがしてきたら、味噌を溶かし完成。1匹ずつラーメン丼に盛って冷凍小口長ネギと冷凍柚の皮をぱらぱらと。見た目もど派手、華やかな一品が出現した。これは大受けでございました。おやじの好きそうなメニューに、採算度外視の味噌汁。蟹の味噌汁が鉄砲汁ならこちらは大砲汁か。

休みのはずが、よく言えばスーパーバイザー、ふつうに言えば小姑の様にアドバイスしまくった忙しい一日ではあったが、みんなの好きな食べ物の形態がなんとなく
掴めてきたことは大きな収穫であった。自他共に認める「華麗な作品を世に送り続ける料理人」のロゴは今日限り封印し、・・・(これはおおうそです。 )かっこつけて「あらゆる食材を自由自在に使いこなす天衣無縫の料理人」日本語に直すと「飯場のおやじ」に明日からは変身である。


俺が造ったぞー

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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