2000.3.7号 07:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「最初の洗礼2」

最初の強烈な洗礼?を味わった後は、37次隊が歓迎会を開いてくれた。主催者の顔ぶれは藤井隊長・・昭和基地を副隊長にまかせたまま遂にドーム基地で越冬してしまった人でつらら隊長と呼ばれていた。山羊髭のせいでだろうか?娘さんの名は「みずほ基地」で越冬したことにちなんでか「みずほちゃん」と言うそうで、おりしも受験期で基地に着いた頃は合格発表がある時期で、なんとなくそわそわしていた。結果は第1志望に合格されたようで、厳しい越冬を味わった顔に父親の顔が加味されて何ともいい顔が印象的だった。

米ドク・・現在は札幌市立病院で外科医長をしている米山ドクター・・この人は副隊長兼2番シェフ兼影のチーフ機械隊員を受け持った何ともスーパーな人であった。後日談があって、帰国してまもなく稚内市立病院に勤務していた際札幌在住の愛妻に逢うべく愛車のハーレーを走らせていた時に、留萌近郊の小平という町で、トラックと接触して足を骨折。留萌市立病院にかつぎ込まれたが、その日のうちに札幌から奥様を呼び寄せて病院を脱走。家に帰ってビールをしこたま飲んだら足が丸太のように膨れ上がったとか?!それでも病院を欠勤することなく、ズボンははけないので奥様のスカートを身につけて手術室に入ったそうである。札幌市在住の方は市立病院に行くことがあったらぜひとも周りを見渡して欲しい。ロン毛を束ねて、耳にはピアス。ちょび髭をたくわえたちょっぴりあぶない目をしたおじさんが米山ドクターである。

池谷隊員・・・現在は森永さんと言う名前に戻って?いる。詳しいことは週刊文春を読んでいた人にはわかるのだが、プライベートに関することなのでここでは省略と言うことで・・・。この人もご多分にもれず耳に3個もピアスをつけていた。所属が気象庁なのにはたして帰国してから無事に登庁できたのだろうか?。我が隊がドーム基地に到着したとき、バニー姿で出迎えてくれたのも彼であった。とてもさわやかな青年で、37次隊が和気藹々と越冬できたのも、何となく納得できる雰囲気を持った青年だった。ニックネームはなぜか「ベネトン」と呼ばれていた。 

藤田隊員・・・北大から参加していた雪と氷の科学者。「ミラーマン」と呼ばれていた。とても物静かな人で、38次隊が世間の垢を持ってきたためかみんなに逢ったとたん重い風邪にかかって寝込んでしまった人。ウィルスさえも死滅してしまう平均ー57℃の超清潔な空間で生活してきたせいだろうか?、現在は札幌の大学に戻り、研究生活に明け暮れているといると思うが、風の噂ではフランス人のマドモアゼルと結婚して幸せな日々を過ごしているとか・・・・うらやましい・・・・・。

さあいよいよ歓迎会開始である。約一ヶ月の間水も無し・食器洗いも無し・ゆったり座れるスペースも無しなにからなにまで何にも無しといった耐乏生活を強いられてきた隊員達にとっては、暖かい室内で、きちんと皿に盛られた料理を、途中で凍る心配のないビールを飲みながら食することができるなんてそれだけで涙々なのだが、食堂に入ってみて さらにびっくり!! 大皿にきれいに盛られたビーフンサラダの周りを彩っていたのは、緑色もみずみずしいサラダ菜だった。種から持ち込み、逆さ野菜製造器で大事に大事に育てられた何株かが皿の上でみずみずしい緑色を放ち、白・白・白と単色の世界で、暮らしてきた眼にはすさまじい鮮やかさで
その色が眼に飛び込んできた。ちなみにこの野菜の種であるが今回のドーム越冬隊は、レタス・グリーンカール・もやし・貝割れ・サニーレタス・大葉・チャイブ・ミニトマト・胡瓜等の主としてサラダで食べる物の他に観賞用として各種の花の種子を持ち込んだ。基地内に搬入するまでー50℃位まで下がった外に放置していたがレタス・貝割れ・もやし等は元気に発芽して、一年間食卓を飾ってくれた。大葉は全然発芽しなかった。ミニトマトや胡瓜も葉っぱが出てくるところまでは行ったが、その後の実となると×あった。これも太陽にあてるとか何とかしなければいけないのだろうか? 超低温に種をおいて、それから発芽するというような例は世界中見渡しても全くないようなので、今となっては謎となってしまった。とにかく歓迎会の始まりである。オイル用のピッチャーにドーム産のビールが入れられて回された。我が隊も同じメーカーの物を持ち込み福田ドクターが一年間作ってくれた。これは市販されている自家製ビールキット「NBジャパン製」で、マニュアルでは最後の仕上げ段階で、空きのビール瓶にできあがったビール液を詰めて炭酸を発生させるとなっていたが、ここには瓶と名の付く物はいっさい持ってきていなかったため、コンクウイスキー(65度)を詰めてきていた50リットルのアルミタンクで最終発酵を行った。味はそのときによって、馬のションベンだったり、酸っぱかったり、まあビールみたいな物だったり様々で、福田ドクターとの友情に免じてバラエティに富んでいたという事に・・。
このときも喉が乾いていたのと、冷たさのせいで結構ぐびぐびと飲んだが、後で考えても「ビールみたいなもんだった・・・」位の味で・・・・・。真心だけごちそうさまです。

この後米山ドクター特製の「おこげのあんかけ」が出たり、37次隊恒例の「闇ケーキ」・・・・手製のデコレーションケーキの中身に唐辛子・鰹の塩から・ご飯等がはいっていて当たり所によっては超まずい!!!!が出たり和気藹々・なごやかな雰囲気の内にドーム基地最初の夜は、ふけていった。といっても外は白夜で、いつまでたっても夕方みたいで、夜という雰囲気はまるでないのだが・・・。



「レタス!!!」
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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