2001.10.23号 07:00配信


南極のドーム基地住人だった西村淳の
アドベンチャークッキング2
【気ままに語る食と人の話】

超スピードウェディングパーティー3


パーティーをしなければと言っても肝心のプロポーズその他もろもろの手続きはその性格同様「竹内君」なかなか進まなかった。最も一生の伴侶(最近はそうでもないらしいが)を決めるのだから、慎重になるのは当然で、ただ「パーティーをやろう!!」と騒ぐオヤジはさぞかしうるさかったであろう。やがてオホーツク海にも流氷が押し寄せ、当時乗船していた 巡視船「そらち」はドック入りのため函館目指して出港した。雪の静かに降り積もる2月の函館。「函館ドック」のすぐ近くには、外人墓地や教会、はたまた金森倉庫等が点在し、どこを切り取っても、旅行雑誌の一頁になってしまうロマンチックな風景の街である。 ただそれも妙齢の美女と一緒だから言えることで、おじさん達がグループで歩いていても、声をかけてくれる女性がいるはずもなく、せいぜい「サウナ メトス」か居酒屋に繰り出すくらいがせいぜいで、かつては「松風町」の近くに「グリーンベルト」なる、オジサンがムヒヒと喜ぶ地帯があったが、それも今は昔。

あっ想い出した。昔・昔・大昔
まだ私が20代も前半の若かりりし頃。先輩に連れられて、この一帯に繰り出した。屋台がズラリと並び、綺麗に着飾った素顔はよくわからないお姉さまがたくさん立っていた。ガイド役の先輩、若いお姉さまがいるところはすっ飛ばして、なぜか砂かけ婆のような顔をした「オババ」が一人で、やっている屋台に入った。
「○×ちゃんまだなの??」と御質問。
「今日は若い飲み客がいるから、○×ちゃん恥ずかしいって」と一言。
どこかにのぞき窓でも?と周りを見渡しても、いわゆる他人の視線はまったく感じなかった。やがてそのオババ「呼んでくるから待ってて」と言い残し、外へ出ていった。
「いやがる娘でも働かせてるんですカー?」とアホな質問をしても先輩はニヤニヤ笑うばかりだった。
「もう少し待ってろって! NO1の娘が来るから。」
「いらっしゃいませー!!」と文字に書けば「おっ待ってました」と声をかけたいような元気な声。
振り向いて、小さな椅子から転げ落ちそうになった。さっきのオババが化粧&着替えをして立っていた。 声のオクターブまで跳ね上がっていた。確かにNO1だった。年が・・・
後年「志村 けん」のコントを見ていて、お婆ちゃんの役をよくやるが、彼もこの「大化粧妖怪婆」の襲撃を絶対受けていると思った。この時は、一気にダッシュしてとんずらした。先輩・後輩のしがらみも、「飲み逃げ」と言う言葉さえも心に浮かんでこなかった。

玉光堂の近くまで走って一息ついた。てくてく裏道を歩いていると、後ろからバイクの音が聞こえてきた。振り向くと、さっきのオババがスーパーカブに乗って追いかけてきたのが目に入った。さっと前に止まって一言「¥1、980!」以後数年間、おそろしい夢と言うとこれだった。 スポットライトを浴びたオババが私に向かって走ってくるのだが、どうしてもおそろしくて足が動かない。ほんとにこわかった。現在、「ホラー映画」を見ても屁とも思わないのは、絶対あの体験から
来ていると思う。

でもちょっといい話でしょう。
と脱線したところで、その想い出多い函館の地で、「竹内君」遂に切り出した。「あのー 結婚しようと思うのですけれど」やった! おめでとう! コングラレチレーション!と言いたい所だが、とてつもない第一の関門がまず出現した。「宴会やろう! パーティーやろう!」と騒いでいた張本人、この私が、何と4月1日付けで、「網走」への転勤内示を受けていた。


こんなオババだった!


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