2001.10.16号 07:00配信


南極のドーム基地住人だった西村淳の
アドベンチャークッキング2
【気ままに語る食と人の話】

春の風が吹いてきた最終章


とにかく何だかんだ、すったもんだがありながら、「面白南極料理人」は世に出る事となった。と言っても具体的な作業は「春風社」の方でどんどん進めていってくれたから、自分では「いつ出来るのだろう? もしベストセラーになったら大島紬で和服でも作ろうか?印税がどーんと入ってきたら、確定申告するためのソフトでも買おうか?それとも税理士を雇った方がいいか・・・」なんてお気楽な事を、ややあきれ顔の家族を前に、カティサークの水割りを飲みながら毎晩一人で盛り上がっていた。

たまに山岸編集長からかかってくる横浜からの電話だけが、唯一俗世界と出版界と言う、今まで縁の無かった桃源郷とをつなぐ「蜘蛛の糸」だった。「いい本に仕上がりそうですよー(*^_^*)」と笑顔が伝わってくるような山岸女史の温かい声を聞く度に、婚姻関係・血縁関係のない異性から何年間も、やさしい言葉をかけてもらったことのないオジサンの心には温かい春の風が吹いてきた。

「羽田空港の本屋さんに並んでいましたよー」うれしいお便り第一号は、なつかしの「南極観測船 しらせ」の乗組員「松平海曹」からだった。休暇で北海道に帰省する途中偶然に立ち寄った書店で見つけたのだとか・・縁があると言うか、天のお告げと言ったらいいのだろうか、はるばる30、000kmも旅して来た船の乗組員が、ほんの小さな地点にしか過ぎない空港で、「和田 誠氏」が書いてくれたフライパンを持った私が氷の上に立っている装丁の、「面白南極料理人」と
出会った・・・いや・・再会したなんてホントに・・・ホントにうれしかった。胸の中で、春の風どころか「春一番」が吹き渡るのが強く感じられた。「ひょっとしたら大ベストセラーの前兆か」なんてつい思ってしまった。

そして数ヶ月・・・。
「ハリーポッター〜」や「模倣犯」はたまた「プラトニックセックス」等の強敵を相手に、ほんのちょっとだけれど我が作品は善戦してくれた・・と自分だけで思っている。なぜかマスコミからもお呼びがかかり、かの「みの・もんた氏」や「青木裕子アナ」なんて有名人とも、共演したり「本パラ 関口堂書店」なんてメジャーな番組でも取り上げてくれた。基本的にはボランティアなので、ドーンとギャラが入ってくる事は残念ながらなかったが、それでもそれを補ってあまりある、たくさんの素晴らしい人達と逢うことが出来た。




しらせ「松平 海曹」・・左


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