2001.10.23号 07:00配信


オホーツクの町村紹介

置戸町

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ここは、webnewsで発行しているメールマガジン「週刊webnews」で特集したオホーツクの町村紹介を再収録したものです。「町村紹介」は、町外者の視点で見た町の紹介を基本コンセプトとして毎月第三水曜日の配信号に掲載しております。オホーツク管内には26の市町村がありますが、その中から町村のみをとりあげ毎月紹介します。


置戸町(おけとちょう)人口4,110人(2000.10現在)
人口約4千人、農業と林業の町、置戸町。町名の由来はアイヌ語の「オケトウンナイ」からきています。“鹿の皮を干すところ”という意味だと、小学校の社会科の授業で教わりました。昭和30年生まれのぼくが子どもの頃、置戸町の人口は約8千人くらいでした。昭和20年代がピークだったと思いますが、この時には約1万2千人の人たちがここで暮らしていたと聞いています。

オホーツクファンタジアにある置戸町の紹介HP
http://www.ohotuku26.or.jp/organization/oketo/oketo.html


おなじたたずまいの木
置戸の取材で最初に行ったところは「図書館」前の広場。子どもの頃いつも遊んだ場所だ。どう変わったか最初に見てみたかった。小さい頃遊んだこの広場は、やはり様子が変わっていた。向こうにあったバックネットと、そのヨコ一列に植わさっていた松が全部なくなっている。奥のひょうたん梨の木もそういえばない。右側にあったポンコツのおんぼろグルマと馬飛びの白いタイヤ、それに4人掛けのブランコもなくなっている。水飲み場のそばには二宮尊徳の銅像があったが、ここには新しい木製遊具と木のベンチが置かれている。きれいに手入れされた花壇もあった。時の流れを感じる。しかし、変わらないものもここにはあった。広場の真ん中に静かに立っている木の姿がとてもうれしかった。


木の匂い
小学校の頃、夏休みになると毎年、向かいの家に札幌から親戚の女の子がやってきていた。見るからに都会っ子のその子は置戸に来るといつもこういっていた。「置戸って列車から降りると木の匂いがプーンとする」。生まれたときからずっとここに住んでるぼくにはその「木の匂い」がわからない。久しぶりにここに来てクルマから降りた途端、木の匂いがした。とても新鮮だった。


縮んだ景色
自分が生まれ、そして遊んだ場所がいまでもそこにある。幼稚園、グランド、家の裏山、近くの三吉神社。どこもみななつかしい。クリスマスになるといつも姿のみえなくなる園長先生、西洋陣とりや釘刺しをして遊んだ幼稚園のグランド、秘密基地をいっぱい作った裏山、さい銭箱をいたずらして叱られた三吉神社。いま、同じその場所に立つととても懐かしい。しかし、ある種の寂しさと、違和感もまた感じる。幼稚園の玄関はもうすこし大きく、グランドはずっと向こうまであり、裏山の崖の頂上はもっと高かった。三吉神社の石段はデカくて、さい銭箱の置かれていた場所はもう少し上の方にあったような気がしていた。同じ場所に立ち、あたりを眺めると景色が縮んでいた。


紺碧の星空
天文大好きっ子だった中学生の頃、拓実(たくじつ)に住んでいる同級生Sの家に、同じ星好き数人で泊まりに行ったことがある。もちろん、星を見るのと星の写真を撮るのが目的だ。Sも星が好きで天体望遠鏡を持っていた。夜になり、裏の牧場に出る。周囲は外灯もなく真っ暗。360度見晴らしも良い。絶好の観測スポットである。びっしり詰まった射手座の銀河、真っ赤なアンタレスのさそり座、未明に揺らめきながら登ってきた真っ白な金星、どれもが鮮明に焼き付いている。30年ぶりに拓実に来てみた。記憶の中にあるSの家はどこかわからなかった。広い牧草地を眺めながら、ふとそこに中学生だった自分たちが天体望遠鏡を担ぎ、空を見上げながらうれしそうに歩いている姿が見えた。あの頃の星は確かに今も輝いている。いつかまた、静寂と紺碧の星空を見上げてみたいと思った。


ふるさと
懐かしいはずの町はすっかり別な町になり、はじめて来たかのような錯覚を覚える。大通りの商店街は驚くように変わり、駅も立派になった。わき道に入っても、砂利道はなくなり舗装されきれいになっている。そんな町に昔、確かにあった建物や友達の家、神社などが消えてなくなっている中、ひとつだけ、変わらないものがあった。小さい頃、登って遊んだ木だけが今も変わらずそこにあるのだ。図書館広場の木、小学校の校舎裏の木、中学校の中庭跡の木。新しい建物が建ち道路がきれいになって景色が違って見えようとも、置戸の木だけは変わらなかった。故郷で30年間この日をずっと待ってくれたのは、あの木だったように思う。ぼくは、取材をしていて車から降りるたびに「置戸の木」の匂いをかいでいた。夏休みになると遊びに来ていた札幌の女の子の言葉を思い出す。そんな置戸の、きっと消えることのないその木の匂いをうれしく感じながら、取材を終えることにした。


◎置戸町の写真はこちら(なつかしいふるさと編)
http://www.mediaservice-jp.com/webnews/01_0815oketo_01.html




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