2001.10.16号 07:00配信


オホーツクの町村紹介

雄武町

週刊webnewsの読者登録はこちらからおこなえます。

ここは、webnewsで発行しているメールマガジン「週刊webnews」で特集したオホーツクの町村紹介を再収録したものです。「町村紹介」は、町外者の視点で見た町の紹介を基本コンセプトとして毎月第三水曜日の配信号に掲載しております。オホーツク管内には26の市町村がありますが、その中から町村のみをとりあげ毎月紹介します。


雄武町(おうむちょう)人口5,836人(2000.12現在)
網走管内最北の町、雄武町。日照時間と気温の低さで農作物が育たず、どこまでも続く牧草地の中に牛が寝転がっている。真っ青な海にたくさんの船。最北と聞くだけで、元気だろうかなんて不安になってしまったが、ところがどっこい、なんとまあ、素敵な町!!どうしてもまた来てみたくなった町だった。

網走管内最北の町、雄武町。
http://www.ohotuku26.or.jp/oumu/


空に浮かぶおじさん
雄武町に入って最初に出会うのが沢木という町。意外に大きい。郵便局の手前から右折し海岸に向かうと、漁師さんの名前の書かれた倉庫がずらっと並んでいる。倉庫横の砂利の上では、大きくながーい昆布が一枚一枚広げられ干されていた。漁師さんのいる町は活気があるという話を聞いた事があるが、昆布を広げる一家の笑顔を見るとそれもうなずける。みんな本当にいい顔をしていて、見ているこっちまでもがうれしくなる。笑顔の似合う町だ。

沢木には、日の出岬という、オホーツクの海に突然突起した岬がある。岬は海からかなり高く、側面は岩の崖になっている。だから、容易には人はそこから海に降りれない。汚されることのない海をみて、おもわず声を上げてしまった。なんと青い海なんだろう。海の底には大小の岩が沈み、それはまるでさんご礁のよう。波も穏やかでさわやかな風が通り抜ける。

一艘の船におじさんが乗っている。ゆっくりと、何かの漁をしている。底まで見える海の中でおじさんの船は空中に浮かんで見えた。ゆっくりと、ゆっくりと、おじさんは空を流れる。


クイズの町
沢木があまりに大きい町で、すっかりそこが雄武町の中心のように感じていたが、しばらく進むと雄武の町に出た。何じゃありゃ?と、見たこともないものが町の中心にある。二本の大きな柱の上に船がはさまっている。それが、「道の駅」と知り、へぇーっと見上げてしまった。漁師町雄武だから船か?なんて思いつつ、頭をかきながら中へ入る。

この道の駅はバスの待合所にもなっている。出発時間の5分前にベルが鳴ると貼り紙にある。なんと親切な待合所だろう。入口そばのバス停には、一日5本あるバスの時刻がでかでかと書いてある。いいなあ、投げやりの様な手書きのこの字。

そのバス待合所の時刻表を見て、また、頭をかきむしることになった。

さて問題。「乙忠部」「近太虫」「枝々差」「音標」これなんて読むんだ?「おとちゅうべ?」「きんたむし?」「えだえださ?」「おとひょう?」多分そうは読まないだろうが「きんたむし」と「えだえださ」がお気に入りになった。アイヌ語に漢字を無理やり当てはめたパズルのような地名だ。どんな意味があるのだろう。アイヌ語辞典を借りてみたくなった。


芸術家
海岸沿いをずっと走る国道238号線。網走から稚内まで続く国道。北上すると、右にオホーツク、左は牧草地。そのずっと向こうに山が見える。そんな景色がひたすら続く。牧草地はサバンナのようだ。大きな木がほとんどなく、ライオンが獲物を狙って潜んでいるようにも見える。ここにアフリカ像がいても不思議でない風景だ。

そのサバンナの中にレンガのサイロが見えた。

サイロに続く道はマーガレットとアカツメクサが紅白のお祝いをして迎えてくれる。そして、ずっとずっと待っていたよと鳴き続けるウグイスの声。ここには昔、確かに人が住んでいた。屋根も朽ちて、今はコンクリートの壁だけになった家が一軒、大きな木を家に迎え入れたままただずんでいる。精密に出来上がっているレンガのサイロは見ていて飽きない。上のほうは積み方を変え、おしゃれに模様が施されている。牛のエサのためだけに作られたはずのサイロにも、こんな遊び心があったんだなあと、なぜかうれしくなった。そのときも、今日と同じようにうぐいすが鳴き、マーガレットとアカツメクサは喜んでいただろう。寝転がって、しばらくこのサイロのそばに居たかった。


パンケペンケポンケ
雄武の町は国道沿いだけではなく、奥に深い。地図を持っていかなかったので、果たしてどれほど大きいのかそのときはわからなかった。

国道に「神門の滝」という看板があった。そこを目指そうと軽い気持ちで山へ。山の中の道道は舗装もされ、とても快適。しかし、行けども行けども何もない。対向車すらない。そのうち「美深まで何キロ」という看板。おお、美深?そう、雄武町の向こうは道北なのだ。このまま、旭川にでも抜けてしまうような不安に駆られ、時間的にも余裕がなく、途中でわき道にそれることにした。

「パンケ」と書かれた古い板の看板が見えた。
雄阿寒岳ふもとに「ペンケトー、パンケトー」がある。それが頭に浮かんで勘違いをしてしまった。小さな湖を勝手に想像して林道のような細い砂利道を突き進む。しかし、何もない。やがて、きれいな川に出た。大水が流れたのか、流木と大きな石があちこちに転がっている。クルマを停め、その大きなごろごろ石を慎重に渡って川岸へ。

川の流れを聞いていると子供のころを思い出す。川に手を入れ、足を入れ、石の橋を作ってみる。「パンケペンケポンケ!」わけのわからないことを唱えながら、何年かぶりにはしゃいでしまった。

あとでわかったことだが、神門の滝は雄武町のずっと奥のピヤシリ山系のふもとにあり、そのそばには湖が点在するらしい。9月下旬にはそこでお祭りが開かれるという。神秘の滝は今度必ず見てみたい。はじめて見た人のように、身震いするような感動をしてみたい。


花の住む町
長い間、無謀にも走り回り、あちこちで目にする花。草。その多さに驚かされる。海岸沿いは知られざる原生花園。ショウブ、マーガレット、ハマナス、エゾニュウ、ジャコウアオイ、アカツメクサ・・・またも、植物図鑑などもっていなかったことを大後悔。知らない花を見つけると、「これはエゾノヒマワリモドキ」「エゾノニンジンモドキ」と、勝手に名をつける。観光客に尋ねられたらそう答えよう。きっと信じてくれる。そんな花に名前をつけていたら、カッコウとうぐいすが笑い出した。

町のあちこちにある川にはアオサギもいる。アイヌたちがいたころと変わらない風景がまだまだここにはあるような気がして、少しうれしかった。

今度来るときは、アイヌ語辞典と植物図鑑と動物図鑑と、それに道路地図がいる。100倍にも1000倍にも楽しめるまだまだ未知の町のような気がして、どうしてもまた来てみたくなった。

そんななぞを秘めた町はめったにお目にかかれない。ここにはまだまだ「ペンケパンケポンケ」とはしゃぐ子供たちがあちこちに潜んでいるような気がしてならなかった。雄武町はそんな町だった。


◎雄武町の写真はこちら
http://www.mediaservice-jp.com/webnews/01_0715oomu1.html




もどる町村紹介のインデックス




Home
(C) 2001 webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせはwebmaster@webnews.gr.jpまで