2001.10.5号 07:00配信


熱中症の病型とその救急処置(主にスポーツ時)




熱中症は予防が大切です。暑いとき特に湿度も高いときは熱中症の兆候に注意し、少しでもおかしいと感じた場合は早めに休むことです。さらに指導者のみならず選手やその家族も万一の事故に備えて救急処置を知っておく必要があります。 重症時の一次救命処置についてはこのコラムの心肺蘇生法を参照してください。 

人の体温は脳の体温調節機能によって身体の代謝により生ずる産熱と身体から逃げていく放散熱のバランスをとっています。産熱は安静にしていても肝臓・腎臓・脳などの内蔵で発生し、運動時には筋肉で発生します。放散熱は大きく2つに分けられます。1つは皮膚の表面より水分(汗)が蒸発する気化熱による蒸発性放散熱(流れ落ちるような大量の汗では蒸発量は少なくなります。)で、もう1つは非蒸発性放散熱といい皮膚表面から体温より低い大気へ輻射熱として伝わる熱の放出です。運動強度に比例して産熱量は増加します。スポーツにより産熱量が増加し身体の放散熱を上回れば、熱は蓄熱量として体温が上昇します。しかし放散熱の身体の機構が正常に働いていれば生命の危険なまでの上昇はしません。即ち放熱機構の働く範囲で運動強度を設定する必要があります。放熱は気温・湿度・風の強さ・輻射熱の影響を受けます。高温多湿で輻射熱の放散が少なくなったり逆に周りより身体に輻射熱をもらうような環境では運動は制限しなければなりません。WBGT(湿球黒球温度)による熱中症予防のための運動指針を参考にしてください。(WBGTに関して熱中症対策の別のコラムにあります。)熱中症には A 熱失神 B 熱疲労 C 熱けいれん D熱射病 の4つの病型があります。ときとしてこのような病型が重なって発症している場合もあり、より重いほうの対応をとってください。とくに意識障害は意識が消失してなくても応答が少しでも鈍く感じたり、トンチンカンな応答でしたら意識障害ありとして対応してください。さらに一瞬でも意識消失があり転倒等ありましたら、表面上の頭部外傷がなくても頭蓋内の脳の損傷や血管の損傷の恐れがあるので重症として扱ってください。少しでも重症と感じたら病院へ搬送してください。

A 熱失神

暑熱環境下での運動により、体温調節のため皮膚の血管が拡張し、身体全体の循環バランスが崩れ、循環不全を起こすことをいう。脈が弱くて速くなり、顔面蒼白、呼吸数の増加、唇のしびれなど、起こして一過性の意識喪失を起こすことがある。

B 熱疲労

大量の汗をかき、水分・塩分の補給が追いつかず脱水・塩分不足で脱力感・倦怠感・めまい・頭痛・嘔気・嘔吐がみられる

A 熱失神 B 熱疲労の場合の救急処置

涼しい場所に運び、衣服を緩めて、寝かせ、水分を補給する。合わせて足を高くしたり、手足を抹消より中枢へのマッサージも有効です。嘔気・嘔吐で十分な水分補給がとれなければ病院にて点滴による水分補給が必要になります。また意識喪失があれば病院へ搬送してください。また症状が回復したからといって一人だけで休息をとらさないで、だれか側に付き添っていてください。

C 熱ケイレン

大量の汗をかき、水分・塩分の不足にたいして水分だけの補給で、塩分不足なった場合、下肢・上肢・腹部の筋肉が痛みを伴うケイレンを起こすことを言う。暑熱環境下での長時間運動時の大量発汗時に起き、ウルトラマラソンやトライアスロンでの水分・塩分補給の不十分なときに見られることがある。

救急処置として生理食塩水(塩分濃度0.9%)の補給(飲水・点滴)を行う。

D 熱射病

暑熱環境下での激しい運動により生じた産熱が放散熱の量を上回り体温が上昇し、脳の体温調節機能に障害がおよぶことをいい。40度以上の体温上昇・嘔気・嘔吐・めまい・意識障害さらにはショック状態に陥ることがあり、脳・心・肺・肝・腎などの臓器障害や血液の機能障害を起こすなどして、死亡に至ることも少なくありません。

救急処置として命にかかわる緊急事態ですので、すぐに身体を冷やしながら、病院へ搬送する必要があります。熱射病が疑われた場合も同様に病院へ搬送して下さい。直ちに行う冷却処置はこの場合皮膚を直接冷やすより、全身に水をかけてあおぐことにより、気化熱による熱放散を促進させ、頸部・腋の下・腿の付け根などの大血管部を直接冷やすことが効果的です。なお近くに十分な水がなければスポーツドリンク・清涼飲料水などを口に含み霧状にして全身にかけて下さい。この場合冷えてなくてもかまいません。熱射病は死の危険の差し迫った緊急事態であることを十分認識し、予防に十分注意を払って下さい。

スポーツは安全で楽しく健康に。白熊でした。


皆様の、ご意見をお待ちしています。
sirokuma@webnews.gr.jp


インデックス掲示板




Home
(C) 2001 webnews
ご意見・ご感想・お問い合わせはwebmaster@webnews.gr.jpまで