2000.7.11号 06:00配信





前回に引き続き『日本東洋医学について』その2についてアップします。不明瞭なところありましたら、メールもしくは掲示板をご利用くださいね。
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★日本における東洋医学と西洋医学 特に未病に関して

西洋医学が正しい医学で、東洋医学は西洋医学でうまく治らなかった人・医者嫌いの人が受けるもので、正統な医学でないと認識されておられる人が希にいらっしゃいます。

これは民間療法(いわゆる伝承治療法で医学的に証明されていないものが多い)との混同をされていたり、明治以後の西洋の学問が正しくて、日本の伝統学問が誤りとした当時の国策が、未だに信じられていたりして、生じております。

残念ながら東洋医学を行う医師は未だ少なく、そのために一般の方々に、正しい知識・認識が、十分浸透していないのが現状です。しかし、私の学んだ大学の付属病院には内科や麻酔科の外来の一部として、東洋医学外来があり、医学部の授業に温泉医学の講義があるなど、東洋医学に親しみやすかった環境に、医師として育った為、東洋医学に携わりやすくなったのだと認識しております。

私を含めて、現在東洋医学行っている医師の大部分は、西洋医学に東洋医学の良い点を組み入れた、和洋混在医学の立場をとっております。そこであえて、言わしていだだくなら、日本における現状として、東洋医学を勉強していく上で、より強く認識したのが、日本と西洋の文化の違いで、あえて断言すれば、日本は恥の文化、西洋は罪の文化。

即ち日本は、他人の目を気にして恥をかかないように、弱みを見せないように、自分の胸のうちに抱え込むことが多く、美徳としてよい点も多いのですが、少し言過ぎかもしれませんが、悪く言えば、他人に見つからずに恥をかかないなら・見つからないならば、何をしてもよい。隠せるものなら隠し通す。

しかし西洋では、常に神が見ているので他人に見られなくても、罪の意識をもち、神に告白することにより懺悔を行う。この表現は、極端ですけど、医学的な分野では精神医学の分野が、特に当てはまるように思います。

日本では精神科そのものが恥ずかしく、なにか心の悩み・辛さがあって精神的に疲れ果てて、肉体的にも支障が出ても、精神科のカウンセリングを受ける人は少なく、一人悩み続けます。

西洋では、悩みも神が与えたもうたものとして受け止め、悩みの専門家として、気軽にカウンセリングを受け、身近な医師として精神科医がいます。また一般の医学の上でも、西洋医学は病気の原因を徹底的に捜し出し、原因除去こそが「病気」の治療の大原則としているのに対して、東洋医学は、なんらかの原因はあるが、それによって引き起こされたバランスの乱れを、整えることが「病人」の治療ととらえます。

このことは、本人にとっては、とても具合が悪くて病院にかかって、診察ならびにいろいろな検査をうけても、異常所見が見つからず、「どこも悪いところは無い」と言われさらに「気のせい」とか「気の持ちよう」(この『気』については、後述します)と言われることは、西洋医学では少なくないように思います(実際私自身も使っておりました)。

東洋医学では、バランスが乱れているものの、病気に迄至っていない状態を『未病』として治療いたします。この未病の概念が、この両者の大きな違いで、先ほどの、精神的苦悩特に、頭と心のバランスの乱れは、この未病の一つと言えます。こういうと東洋医学のほうがすぐれているように聞こえるかも知れませんが、日本においても、西洋医学も最近では心身症を対象とした心療内科や、原因不明の状態に対する総合診断科が、取り入れられてきておりますし、我々が和洋混合治療を行っているといっても、全員が東洋医学療法を行っているのではなく、患者さん一人一人にあった治療法を選択しており、確かな統計ではありませんが、東洋医学療法のみは、10〜20%、混合が20〜40%程度で残りの40〜60%が西洋医学単独で、西洋医学なくしては我々の治療が成り立ちませんし、検査にいたっては、ほぼ100%西洋医学を活用しております。

実際西洋医学だけで治療されている医師の方が、圧倒的に多いのは事実です。でも東洋医学にも良い点があり、患者さんによっては東洋医学を組み入れた方が合う患者さんもいますよ、といっているわけです。もちろん、私も治療の中心はあくまでも西洋医学であり、東洋医学よいところを応用しているわけです。

ではまた、次回まで。
しろくまでした。
sirokuma@webnews.gr.jp


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