2001.3.17号 07:00配信


スワヤンブナート 猿の寺

(紋別市社会福祉協議会:篠原辰二)


僕はネパールに今回を含め3度訪れている。しかし、その中で観光はほとんどしていない。行ったことのあるところといえば寺院が2〜3カ所と美術館くらいなものだ。日本で買ったネパールのガイドブックを読んで、観光気分に浸るだけだった。無事にネパールの地に足を踏み入れることができた僕等だったが、翌日からの国民のストライキのため、旅の予定が崩れてしまった。ただでさえスケジュールに空きがない僕等の旅であったが、こんなに長くフリーな時間を過ごせることは無い。「旅にアクシデントは付き物」と思っていた僕等も、思っても見ない空いた時間を観光に費やすことにし、あわてて外へと繰り出した。僕等がこの日目指したのは「スワヤンブナート」通称猿の寺だ。

ネパールは北海道の約2倍の国土を持つ王国。そこに2259万人の人々が暮らす。地球の屋根とも呼ばれる8000m級の山々と雄大な自然が満ちあふれる国。どことなく日本人に似た面持ちのモンゴロイドやヨーロッパ系の顔をした人もいる。街を歩いていてもネパール人か外国人ツーリストかは見分けが付きにくい。明らかに観光やバックパッカーといった装いの人は別として、ファッションセンスの良い若者などであれば、その会話から言葉を聞くまでは解らないほどだ。ネパールは今、2057年。イエスキリストが生まれる以前にこの国の暦は創られ、今も尚西暦と違ったヴァクラム暦で時間は流れている。その昔、この国には神のみが存在していた。大地を創る神、病を消し去る神、そして悪の神も多く存在したという。僕等が住む北海道の町村では、人口よりも牛の数が多いとか、馬の方が多いとか聞かれるが、この国は人の数ほど神が存在している。そのため、ネパール人でさえ有名な神の名前とその御利益を知らない。

首都カトマンドゥ、ネパールに神の住んでいたその頃、そこは大きな湖だった。その湖の四方には大きな寺院が建てられ、湖に住む龍神を奉っていた。その西の寺院が僕等の目指しているスワヤンブナートだ。この寺には野生の猿が多く暮らしている。そのためにこの寺の別名がモンキーテンプル(猿の寺)だ。病気になった他の神様のために、薬草を取りに行った神、それが猿の顔をした神ハヌマーンだ。猿はそのハヌマーンの化身。そのため、人は猿に対して危害を加えない。ここの猿は人間が残していった供物やゴミを餌にし、生きながらえている。しかし、多くの猿はまともな餌にありつくことができずに段ボールや紙、ろうそくやたばこの吸い殻まで口にする。ここの猿には手足が未熟のまま育っている猿や体毛が抜け、皮膚がただれているものも多いことに気づく。おそらく食べ物の影響だろう。神の化身である猿でさえ、人間のゴミや公害物質によって生かされている今日、神と人間との関係像も少しずつだが変わってきているように思える。神の怒りの矛先がこの国の向けられる事もいずれかはあるのだろう。人の豊かさに物質的なものを求め始めているネパールに僕は少し寂しさを感じた。



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