2000.4.21号 09:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「魔女宅小屋1」

「とんとんとん」ー60℃の気温の中で、トンカチの音が響いている。「平沢隊員」がほぼ毎日打ち上げる、GPSゾンデ、ヘリウムガス充填小屋の仕上げ作業である。「オレンジ御殿」「カチンコチンドーム」等雪を使った建築ラッシュが続く中、数少ない樽木とベニヤ板を使っての本格的建築物である。なんでも「平沢隊員」のご先祖様だかおじいちゃんか、親戚のいとこのはとこの赤の他人だか、聞いたけれど忘れてしまったが、 誰かが「左 仁五郎」の血を引いているそうで、それはそれは精密な図面を書いてきた。

対して請け負った建築作業員は、私と「川村隊員」の2名である。なぜこの2人が選ばれたのか?時と場所を選ばずぺちゃくちゃ喋りまくっている2人だが、それがこの建設作業にピッタリと思われたのか、それとも喋りまくる元気があるのだから、単に暇だと思われたのか、ともかく緻密な設計者に対して、アバウトな大工さんと言うチームで建設計画はスタートした。当初の予定ではスペアの少ない、樽木やベニヤ板を少しでも節約するため、ロスを極力少なくしたプランが出されたが、それを聞いているのか、いないのかこの大工さん達・・・。やがて作業が始まって現場を見た「平沢隊員」。たぶん倒れそうになったであろう。

プランでは糸鋸で、骨組みとなる樽木に細かく切れ込みをいれていく作戦だったが実際に作業が始まるとこの大工さん達、なんとチェーンソーで切れ込みをいれだした。15.0秒の沈黙の後「・・・・・・・・・・大丈夫ですか・・・・」とかろうじて声を出した物の、作業はどんどん進んでいく。どうしてこの様な掟破りが生じたのか?確かに最初はプラン通り糸鋸でシコシコ切れ目を入れていったが、寒さのためあっという間に刃が折れてしまうし、のみでこんこん溝を入れていこうと思っても、残りの部材を見ると作業完了まで約3年6ケ月かかることが川村・西村で相談した結果判明した。

普通の言葉で言うと作業開始と同時にめんどくさくなった。
以下理由を箇条書きにすると、
・ー60℃の中で少しでも能率的に。
・糸鋸の刃の節約。
・ここには建築基準法がない。
・一年持てばよい。
・少しくらいゆがんでも土台の雪のせいに
できる。
・俺達はプロの大工ではない。
・チェーンソーで作業をした方がいかにも
仕事をしているように見える。
と勝手にこじつけて、
チェーンソーでGOとなった。


写真「チェーンソーで工事開始」

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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