2000.4.13号 08:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「けがした!!1」

越冬隊は健康な人達が集まっている。・・・と言うことになっている。もちろん出発前にロールシャッハをはじめとした精神テストまで含め厳格な身体検査が実施され、それなりにふるいにかけられるのだが、ドーム越冬中「絶対この人は精神テストで引っかかったからここへ飛ばされた!」と確信できる人もいた。まあ実名で書くと、「告訴するー!!」と泣きながらかかってきそうな人もいそうなのでそれは内緒と言うことにして・・・・。

今回は患者を治すドクターが患者を作った話を一つ。
3月も終わりのある土曜日。ゾンデ打ち上げに備えて、ヘリウムボンベの移送作業をしていたときのことである。ドームの様な辺境の地で、けがをしないこつは、
・危険な作業をしない。
・無理はしない。
・危険には近づかない。
そして一番大事なのは
・危険な作業をどうしてもしなければならない時は絶対に信頼できるバデイを選ぶ。
とたたき込まれていたので、極力実践するようにしていた。一本60kg余りあるヘリウムボンベは、持ち手もついていないので、もの凄く持ちにくい。体力の衰えを悪知恵でカバーしている私は、「こんな滑りやすいあぶない代物は、落としたら困る人と組む」
と心の中で密かに誓い、この観測の当事者「林隊員」となるべくぺアーになるように立ち回っていた。この作戦は大成功で、「風呂に入らないこ汚い体に、クリスタルの様に澄み切った探求心」を持つ細身の科学者は、まさにガラス細工を扱うように慎重に、慎重に作業を進めていった。

途中でふと横を見ると、福田ドクターがボンベを抱えている腕に、オーバーミトンを着けているのが目に付いた。表面がナイロンコーティングされているこのミトンはつるつる滑りやすいので、重い物を持つときには使用厳禁である。「ドクターあぶないってミトンしていたら」と一言注意を・・・・「でも外気温が低いしさー、凍傷にでもなったら誰が治療するのかしら?・・大体こんな装備を用意する極研がネ ブツブツブツブツ」長くなりそうなので、素早くパスして次の梯子作業の段階へ。事故はここで起きた。


写真「除雪作業」

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。



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