2000.3.25号 20:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「メニュー表の話」

隊の運営の中で当直というのがあった。これは掃除・風呂のフイルター変え・燃料の補給・造水槽の温度測定・トイレのパック交換・食器洗い等々、生活に必要にして面倒な様々の雑事を交代で行うのであるが、大事な作業の一つが日誌の作成である。普通の大学ノートに、その日の各部門の作業内容・昭和基地の様子・上映したビデオの内容等を大学ノート1ページほどに箇条書きしていく。その中で一番最初に記入するのが、今日は何を食ったのかすなわちメニューである。その隊員の性格で、細かくレシピ付きで書く人、 総評を書く人、様々であったが、無愛想・そっけなさ・はしょり書きNo1はなんと、隊をたばねるはずの無口おじさん「金戸基地長」こと金ちゃんであった。

ある日のメニューである。

朝食

味噌汁 納豆(ネギ入り) 漬け物 佃煮 ふりかけ
わさび漬け 果物缶詰

昼食

海老チャーハン 海草サラダ にらと卵の中華スープ

夕食

ロブスターカツレツ&バターソース シシャモ焼き(冷凍大根おろし) 野菜コロッケ 冷凍ほうれん草バターソテー


こういうメニューが食卓に並んだのであるが、金ちゃんが記入すると

朝食

〜パイン缶

昼食

エビ卵煮込み飯 にら玉汁

夕食

ロブスピカタ ししゃも コロッケ ホーレン


日本で帰国後に開かれる「食料委員会」で栄養士のおばちゃんが見ると倒れてしまいそうな貧弱なメニユーに見える。食事に関心がないのかと思うと、自分の食事当番の時は、正統派の北海道料理で勝負してくるので、潜在的な料理人の腕前はなかなかのものだと思うのだが、それでも オーストラリアの市場で買ったら、一匹$20のロブスターが、「ロブス」では、海老達が草葉の陰で大泣きしていることだろう。「記録に残るのだからメニューはきちんと書いて下さい。これでは手抜きしているのがみえみえではないですか!」と抗議すると点一個に15秒かけて「・・・・・はい・・・・・」と答えが返ってきた。が次の時にも

朝食

御飯 パン 絹さやと豆腐の味噌汁 目玉焼き ロースハムソテー 漬け物 佃煮 梅干し

昼食

ウナギ丼 とろろ昆布の澄まし汁 柴漬け 冷凍オレンジ

夕食

鯖ムニエル パリジャンポテト 空豆 白松前付けと数の子の和え物 ムール貝とベーコンのチャウダー


朝食

ハムソテ

昼食

うなぎ トロロコンブ汁

夕食

サバ 白松前 クリームコーンシチュー


とますます素っ気ない記入。これは本人の気に入った物しかプログラムにインプットされないのだろうと解釈し、以後は金ちゃんの当直の時には後でチェックして自分で書き足すことにした。

(あなたのパソコンのせいではありません/webnews)

ある日のメニュー

注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
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