2000.1.2号 09:00配信


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第38次南極地域観測隊 ドームふじ観測拠点越冬隊

「食と生活の記録」より/by 西村淳



「みんな冷凍食品だー」2


ドーム基地
注意:写真はすべて国立極地研究所に属します。
個人で楽しむ以外(メディア等への掲載)は禁止します。

野菜の次に課題となったのが卵である。卵も殻付きのまま冷凍庫に入れておくと、白身の部分は何とか原型に復してくれるが、黄身はなんとなくゴムかはたまたスポンジの様になってしまう。又ドームへの旅は大半が荒れた雪面で動揺も激しい事が予想され、生卵は最初から持っていく気はなかった。
しからばどうするか・・・・「宗谷」が南極へ行っていた遙かな昔。卵は「粉末卵」と称する物を持っていったそうである。これは旧海軍でもさかんに使用されていたと言われるが、水で溶くと、卵焼きの原型の液体状になり味は「あーあ卵だよね・・・」位の代物で、口の肥えた現代人にはとても実用にならないものだとか・・・。だいいち作っているメーカーがわからない!!しからばどうするか・・あるのです。冷凍卵という素晴らしい製品が!!

メーカーはかのマヨネーズで有名なキューピーである。30次隊の時も冷凍卵は存在した。パック入り牛乳の様に攪拌した液体が20〜30個分ほど入っている。そのまま卵焼きやオムレツ等に使うには全く問題なしであるが、親子丼やカツ丼、卵綴じの様に火が入ったときに凝固する特性を生かした卵料理には、なぜか固まらず炒り卵を投入したようにころころのだまっこになってしまう。丼というのは基本的に男が好きな料理である。いくら鉄の胃袋を持った越冬隊員と言えども、カツ丼を食ったときトロリとカツをおおっているはずの卵が、甘辛く煮られたカツの上にスクランブルエッグが乗っていたのでは興ざめである。この卵の特性を保ったまま冷凍状態になっている製品の確保が次の課題となった。

まずはカタログ拝見である。冷凍卵の項を見て先進国日本の日進月歩の技術の進化がこの目に飛び込んできた。列挙すると

凍結全卵・・・従来通りの冷凍卵
濃縮茶碗蒸しの素・・とき卵に出し汁をプラスしたもの
エクターNO2→忘れた
エグロンホール→無塩卵黄
凍結卵白───  読んで字のごとし
アングレーズソース→液体カスタードソース
加塩凍結卵黄→味のついた液体卵黄汁
チルドロングエッグ→棒状ゆで卵
錦糸卵→水に戻すとあっという間に錦糸卵

とまさにいろいろな種類の冷凍卵製品が発売されていた。さらに目を通していくと、なんと「凍結全卵 丼用」があるではないか。これは卵をパックしてそのまま下にグシャッと落とした状態と言えば大体の形ができあがる。全部攪拌しないで卵の凝固作用をそのままにして冷凍した製品でまるで「私のために作ってくれたのか」と叫びたくなるタイムリーな物だった。これで満足すれば卵の調達は大成功となったのであるが、根が日本の標準語北海道弁で言う所の「ほいと根性」&「欲たかり」丸出しの私は、この世で愛する食べ物の中で2番目に好きな料理「おでん」をどうしてもー80℃の大地で食してみたいと思っていたので、これで満足することなく次は「ゆで卵」を捜し始めた。ちなみにNO1は「ざんぎ」であるがこのネーミングが北海道以外の隊員にはどうも気になってしかたなかったみたいであるが、これは北海道に帰って愛妻に「お帰りなさい JUNちゃん料理」で食おうと心に誓っていたので、とうとう越冬中に食前にあげなかった。「鳥のさー空揚げのうまい奴だって・・」とお茶を濁していたが、今考えるとちょっと可愛そうな事をしちゃったかなぁなんておおいに反省している。まあ北海道に来た折には山ほど食べさせてあげますのでご勘弁をネ!。
話を戻して・・。

いくら捜しても、冷凍ゆで卵と言うのは見つからなかった。その代わりというか「鶏卵水煮の缶詰」を見つけた。まあ「うずら卵水煮缶詰」のおっかさん位のサイズだと思えば間違いない。これも迷わずうずら共々2ケース(48缶)ゲットしたが大失敗!!!ドーム基地に着いて、さて使いましょうと缶を開けたところ、氷の固まりの中に灰色に変色した塊が視界に入って来た。解凍すれば大丈夫と、戻したが皮はゴム状
に変化し、ぶよぶよのがちがち・・・。ピンポン玉か海亀の卵でも持ってきたかと錯覚する程変質していた。確かホームフリージングの本には「ゆで卵は多く作ってフリーザーで冷凍保存して置きましょう」と書いていたはずなのに・・・作者に向かって「ほら吹きのくそばばあぶっ殺す!!」とわめいてもまだ会ったことのないその人ははるか1万6000kmの彼方である。涙を飲んで越冬中はゆで卵なしの「おでん」で我慢することにした。

くやしいー!!!!


昭和基地の初日の出


愛車105


転がる太陽
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