2000.1.1号 12:00配信


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紋別新聞 平成12年1月1日版より

コミュニケーション新時代/インターネット最新事情

「ウェブニュース」の世界



「オホーツク圏の総合サイト」
趣味や地域情報など掲載

 昨年八月一日、インターネットホームページ「webnews」(ウェブニュース)が、網走管内のパソコンユーザー有志の手で開設された。「ウェブ」とはクモの巣の意味で、世界中に張り巡らされたインターネットを指す言葉。これに「ニュース」が付き、さしずめ「インターネット新聞」といった意味になる。
 取り上げる内容は、市町村ごとの行事案内から趣味・レジャー、政治経済、コンピュータ、コラムなどと広範囲。しりとりやスロットマシンなどの遊びのコーナーも用意した。利用者が自由に書き込める「掲示板システム」を取り入れるなどインターネットならではの展開を図り、日を追うごとに利用者も増加している。
 テレビや新聞とも違う、インターネット時代が産んだともいうべきこの新しい情報媒体が目指すものと、日常生活に与える影響を考えてみることにする。

管内一円にスタッフ
運営はボランティアで

岡島・ウェブニュース代表

 北見駅前に立ち並ぶビルの一室。毎日ここで黙々とコンピュータのキーをたたいているのは、ウェブニュース代表の岡島隆広さん(44)。
 岡島さんは、デザイン会社、北海道メディアサービスの社長。オフィスには、管内各地にいるスタッフや利用者などから連日多くの電子メールやファックスが届く。八月のウェブニュース開設以来、仕事の合間を縫ってこれらを記事に仕立てて、ホームページとして公開する作業が日課となった。
 ウェブニュースの仕組みをもう少し詳しく説明しよう。スタッフは、管外の人も含め約三十人。ほとんどの人がインターネットを日常的に利用している。それぞれジャンルごとに分かれたコーナーや掲示板を受け持ち、記事となる情報を自ら掲示板に書き込んだり、岡島さんへ送るなどしている。
 当初は、副代表で市内の印刷会社、ソーゴー専務の山市喜雅さん(46)を含め五人ほどだったが、じわじわと増えて今の人数になった。住所も仕事も年齢もさまざま。全員が無償のボランティアで「面白そう。参加したい」と、ウェブニュースの可能性に惹かれて集まってきた人たちばかりだ。スタッフは誰でもなれる。
 ホームページのデータを蓄積するサーバーコンピュータの管理も、スタッフでもある美幌のインターネット接続業者が無償で行っている。紙面づくりも閲覧も、すべてパソコンがあればできる。印刷機や配達員はもちろん必要ない。こうした簡素なシステムが、ボランティアでの運営を可能にしている。

人の輪広がる「掲示板」
画像、映像なども取り込む

 では、提供している情報はどのようなものだろうか。
 ウェブニュースでは「オホーツク地域の生活に密着し、生の情報を満載した日刊のインターネット新聞」を標榜している。それを支えるのが、利用者同士による「情報の共有」という精神だ。
 仕事のこと、勉強のこと、趣味のこと、町内のこと、日ごろ考えていること―人々はそれぞれ独自の情報を無数に持っている。しかし、そうした情報を新聞やテレビなど既存の情報媒体が取り上げる機会は希だ。
 しかし、ウェブニュースは、そうした個人の持っている情報を集約し掲載できる仕組みを持っている。パソコンで文字を打ち込むと即ホームページに反映される「掲示板」がそう。各コーナーに設置されており、見ている人がその場で自由に情報を載せることができる。
 掲示板は、いわばインターネット上の井戸端会議といえるものだ。新聞記事のように形式に則った文章を使う必要はなく、ほとんどが話し言葉に近いくだけた文体で書き込まれている。「○○さん、こんにちは」「きょう、こんなことがありました」といった利用者同士のやりとりの中に、さまざまな情報が織り込まれるというスタイル。ここで扱われる情報は、口コミに近い役割を果たしているといえるだろう。また、質問を書き込めば、誰かが答えやアドバイスを書き込んでくれる。
 実際にあった例を挙げる。「おいしいラーメンの掲示板」で、北見に札幌の有名ラーメン店の支店ができるという情報が載った。すると、他の人からも食べた感想や店の様子などが次々と書き込まれた。それを見ていた筆者は、紋別に居ながらそうした情報を逐一得ることができた、といった具合だ。

 掲示板以外にも、各市町村の行事予定、テーマごとのお知らせなどが記事として掲載されている。新聞などで取り上げられた情報も多いが、ホームページだと、削除しない限り情報はいつまでも残り、見る場所と時間を選ばないなどの優れた点がある。
 ウェブニュースは、手軽な創作発表の場としても開放されている。津別のある女性スタッフは、自身のコーナーに毎日新しいエッセイを載せ続けている。併設した掲示板を通じて読者の反応も知ることができ「文章の修行になる。こういう場ができてありがたい」と話している。
 文章以外にも、画像や音楽、映像などのデータを扱えるのがインターネットの特徴だ。「ウェブニュース・ギャラリー」ではこうした面を生かし、管内の建築家や織物作家などの作品を取り上げてきた。
 また、アマチュアミュージシャンのデモテープ、ライブテープを集めて配信するプロジェクトが現在進行中だ。地方では発表の場に恵まれないアマチュアミュージシャンだが、これだといつでも誰でも試聴ができるため、音楽プロダクションの目に留まってプロデビュー、なんてことが実現するかもしれない。「ストリートミュージシャンの掲示板」で受け付けている。
 紙媒体のようにページ数の制限もなく、情報量はいくら増えても構わない。これは、さまざまな取り組みをする上での大きな武器だ。


デモテープ収集プロジェクトなど意欲的に実施

個々の情報が結合
地域の新しい可能性開く

 これまでも述べてきたように、利用者同士が情報を出し合う、いわば「素人パワー」を結集することで、より地域の生活に密着した生の情報を提供することを目指している。利用者のターゲットは、いうまでもなく同じ地域の人たちだ。
 現在、インターネットの国内普及率は、全人口の一〇%をようやく超えた段階。詳しい統計はないが、網走管内ではその数値を下回わるものと思われる。そういう意味では、ウェブニュースが本領を発揮するのはまだ先のことだが、パソコン価格の下落、操作の簡素化などで、女性や高齢者、子供などにも今後普及が進むのは間違いない。

 利用者に聞くと、掲示板でさまざまな人とやりとりをしていると、お互いの住んでいる場所を超えて、同じ空間にいるような錯覚に陥るという。紋別にいながら、北見や網走の人と言葉を交わし合う。実際に会ったことがない人でも、やりとりを続けるうちに親近感を覚えるようになるから不思議だ。
 ウェブニュースでは、スタッフや利用者が実際に集まる「オフ会」という会合をたびたび開いている。初めて顔を合わせる人同士が、いきなり昔から知り合いのように打ち解けることは珍しい光景ではない。
 そう考えると、ウェブニュースは単に情報を伝達する媒体というだけでなく、人と人を結ぶコミュニケーション手段であることが見えてくる。
 ウェブニュースを出会いの場として、市町村を超えた人のつながりができるのは自然なことだ。すでに、スタッフだけを見てもさまざまな職種の人が名前を連ねている。こうした中から、新しい動きや事業が立ち上がる可能性も大いにある。
 個々に抱えていた情報が結びつく。そして、生活、文化、経済など、さまざまな面で地域の新たな可能性が開けてくる―そんな真の情報化社会の姿が、ウェブニュースを通して垣間みることができる。




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