2003.4.24号 12:00配信


町 村 合 併 講 演 会

(webnews生田原支局長)



4月17日、午後6時30分から地域集会施設「かぜる西」を会場に、関西学院大学の小西教授をお招きして「町村合併講演会」を開催しました。小西教授は、総務省(旧自治省)の「市町村合併推進会議」、「市町村合併研究会」の委員をされており、市町村合併について第一級の見識をお持ちです。会場には、一般町民のほか町議会議員、遠軽町や遠方の雄武町などから100名ほどの参加があり、合併についての関心の高さがうかがえました。

【講演要旨】
講演テーマ〜北海道における市町村合併〜

町長のご挨拶でもありましたが、自分の町が合併でなくなってしまうということは、腹立たしい思い、憤りを感じるのが当たり前だと思います。しかし、私は怒ってばかりいても仕方がないので、なんとか合併を前向きに受け止めて考えられないかと思っています。合併には、良い合併と悪い合併があって、どんな合併でも良いというわけではありません。4町村で合併論議を深めていく中で、よい合併とはこういう合併ですよ、ということをはっきりイメージをもって、そちらへ行くか、行かないか、できるだけ皆さんで協力して良い合併のほうへ行く努力をしたけれども、残念ながら良い合併の方向に行かないことがはっきりした場合には、名誉ある撤退をしなければなりませんし、その覚悟がなければ合併協議はできません。今、この地域ではこれを見極める作業をしようという時期にさしかかっているわけです。私は、このような時期に4町村のアドバイザーという非常に大きな役割を与えられており、自分の置かれている責任の重さをあらためて自覚しています。道内で合併を語った経験から何十倍の人口格差がある大都市と隣接した道東のある自治体では、大都市とのいわゆる編入合併を前にして、まさに飲み込まれることを前提としてものすごい恐怖感、警戒感がありました。合併に対する住民の反応は、なぜ、今なのかという疑問、国のやり方はけしからんという怒り、何とか合併しないで済む方策はないかという思案、あるいは合併は役所の話であって自分は関係ないという無関心、などが代表的なもので、その自治体でも状況は似ていました。しかし、この4町村では新設合併の方向で、私の言葉でいう「過去のしがらみを乗り越え理想に燃えた一つの自治体を作る」ことができるといえます。人口格差が何十倍もある自治体では、このことがとても難しいことになります。合併を前向きに考え、合併する以上はよい合併をしてほしいと思います。

政治主導の合併

国の施策は大別して、政治(永田町)主導のものと官庁(霞ヶ関)主導のものがあります。市町村合併は、総務省(官庁)が地方交付税を始めとする財政運営に失敗して大きな赤字を抱えたので、市町村合併による経費削減で埋めるのが目的だという見方があり、そうだとすれば、国が合併を市町村に押しつけ、自らの失敗を隠すという図式になります。ところが、昨年の夏に総務省の片山大臣が、経済財政諮問会議に提出した総務省の改革プランでは「市町村合併後の自治体数を1000を目標とする」という与党の方針を踏まえ、政府としてもこの実現に向けて市町村合併特例法の期限である平成17年3月までに十分な成果が挙げられるよう、自主的な市町村合併を一層強力に推進、と明記されています。政治的判断に基づいた政策というのであり、しかも行革の文脈で合併が扱われています。
しかし、このような問題や一方的なやりかたであっても、やれる合併はやったほうがよいと考えられます。この地域でもそれぞれの差はありながら、この地域で前向きにとらえて、後戻りのできる勇気を持ちつつ4町村で良い合併ができるだろうか、という一歩を踏み出したほうがよいと思います。何も考えないで合併する、国が推進しているからやる、財政が厳しいから、自信をなくしてお手上げで合併する、などは悪い合併の例です。この地域としての組み合わせの中で、理想に燃えて一つの新しい自治体がつくれるのか、住民が見ている中で役人を本気に追い込んで、疑いをもちながら見極めて、妥協せずに厳しく見ていく必要があります。そのことが、結果的に良い合併につながることになります。

合併で見極めるものとは

財政問題や行革の必要の他に、合併すべき理由があると考えます。それは、小規模町村の実態として、持っている権限を使いこなすには、あまりにも組織が小さく、合併によって権限と組織のアンバランスを解消すべきということです。NHKの合併問題の番組で調べた事例では、人口5000人のある町の31歳の総務課職員が一人で担当している仕事は、20万都市でいえば12の課と係で分掌している範囲であったそうです。残念ながら、小規模町村では権限にふさわしい組織にはなっていないと思いますし、20万人都市の職員と比べて役場の職員では、一人で何役も兼職をこなしながら朝早くから遅くまで本当に良く働いているという現実があります。このような事例から、合併の中心は役人が高いレベルで仕事をしてもらうために、権限にふさわしい組織を拡大するということですが、規模が大きくなって本当によくなるのでしょうか。人口が2万人、3万人になったら本当に良い仕事をしてもらえるでしょうか。小規模ですが役人のモチベーションの高い村があったとして、近接する市は機能を担うにはふさわしい規模ではあるけれども、モチベーションは低く、いわゆるお役所仕事に甘んじているとします。合併して村の高いモチベーションが封じられるのであれば、悪い合併になります。
合併をして一つになったけれど、内実はひとつひとつで、予算の配分でも役人の発想も住民感情も議会の議論もいつまでも旧自治体組織の意識が残って、得した、損した、裏切った、騙されたという話を延々とやっている、そうすると、こんな合併誰がやったんだ?ということになります。良い合併とは、一つの自治体、一つの地域として、旧自治体ごとの思いがあって、合併しても暫くのあいだは目配りをきかせながら努力して、我慢して、忍耐をして、一つの自治体として頑張って、一つの地域になっていこうという、チームを組む以上は最低限の信頼関係を作っていくことです。この雰囲気になれなければ、烏合の衆となります。
合併協議で見極めなければならないのは、お互いに信頼できる相手であって、すきあらば、わが地域だけが得しようという気持ちをお互いに戒め合って、応分の取り分を主張しつつも“ころあい”のとれる最低限の信頼関係を築くことができるか、この呼吸があうかどうかです。

財政問題は一時期を除けば中立的

地方財政制度の中心は地方交付税制度でありますが、これは人口や経済力の違いがあっても一定以上のサービス提供を保証する制度です。つまり人口と経済力の違いを打ち消す仕組みで、その結果、規模が大きくなってもただちに財政力が増すわけでなく、その意味で、合併は財政的には中立的です。10年間の交付税の特例措置や合併特例債は財政的メリットですが、それらが終われば中立的です。合併は、スタッフ強化の意味で新たに強力な自治体を作り、知恵を出してしっかりと地域形成をすることですから、前向きの姿勢が必要となります。合併のきっかけは財政問題であっても、それを越えなければ、合併から得るものは少ないと思われます。

西尾私案と合併の目指すもの

地方財政調査会に西尾勝教授が提出した西尾私案が波紋を呼んでいます。平成17年3月の現行の合併特例法の失効後、一定の周知期間をおいて、小規模町村は、現在の機能を縮小して、都道府県か近隣の市に移譲するというのが主な内容です。これに対して、合併しない市町村に権限縮小という脅しをかける強権手段でないかと、社会的に大きな反発を招きました。合併問題が財政問題であると見れば、西尾私案は合併しない市町村への脅迫と映ります。
しかし、権限と組織のアンバランスの解消と理解すれば、見方は変わります。自主的合併では、小規模町村はすべてはなくならないので、権限と組織のバランスの悪さを解消するには、強制合併をするか、権限を縮小して規模にあわせる西尾私案のどちらしかありません。権限にあわせて規模を変えるのが合併なら、規模に応じて権限の再配分をするのが、西尾私案です。よき合併相手が見いだせない小規模市町村にとって、西尾私案は筋悪な悪い考え方ではないと思うのですがどうでしょうか。
また、西尾私案には、合併はするけれどもその中に地域自治組織をおいてそれぞれの地域が限定付ながら自治を持ち続けるという考え方が入っています。4町村が合併するにしても生田原という地域の自治を何らかの形で残していくことを考えたほうが良いと思います。北海道ではこの考え方をニセコ町の逢坂町長が総務大臣に提案しています。本州と違って北海道の広い面積では地域自治組織を見極めないとなかなか合併ができないと思います。今、この地域が考えることは、4町村が一つの自治体としてまとまり良い合併ができるかだけを極めていただき、西尾私案があるからともかく合併しようと考えることはありません。
生田原、遠軽、丸瀬布、白滝4つの自治体が、権限にふさわしい組織を作り一つの自治体としてまとまることができるか、理想に燃えた一つの自治体が作れるのか、4町村の合併は努力次第で良い合併ができると思いますが、とても難しいことでもあります。目配りと気配りをきかした合併が本当にできないとなった場合には勇気をもって後戻りをするという姿が一番あるべき姿であると思います。

(主催:生田原町・遠軽町・丸瀬布町・白滝村任意合併協議会)



講演会



真剣に聞き入るみなさん。







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